3iのLABーBOXなどの製品群はただ消費者を楽しめたいというアイテムなのだ

 前回の本欄では、まっすぐに進むことを正道だと思う点について疑問を呈した。今回は、さらに『理念を持って行くのが正しいと誰が言った』という点について、観点から私見を語ってみたい。

 20190718_114426.JPG明日は参議院選挙である。各党とも、様々な党是を語っている。まぁ、選挙だし政治家はそのあたりのビジョンを語るのが仕事のひとつだから仕方ないだろうが。語っている個人個人は本当にそう思っているのかどうかだ。別に、理念が嘘とは言っていない。実は、心の奥底はもっとシンプルな思いなのではないか、ということだ。例えば、政治に関してだったら、自分の理想とする制度を作りたい、自分のイメージする世の中を作りたい、というよかろうが悪かろうが関係ない創造欲である。

これは、一般的な個人の行動だってそうではないだろうか。若いころは、何々になりたい、という希望は当然に持ち、もっとも理想を作る。が、その根底はシンプルな場合が多い。例えば、弁護士になりたいという希望があったら、困っている人を救いたい、正義のために戦いたい、などというモットーがあるが、そんなたいそうなことは一部の偉人候補生くらいしか思いつかないだろう。もともとは、根底に闘争欲だったり、出世欲、権力欲などがあり、あとで知識で肉付けした場合が多い。

もちろん、これは悪いことではない。堂々と、この欲望をパワーにして司法試験に受かろうと呼び掛けている講師もいた。これは、医者だってそうだ。良い暮らしや食いぱっぐれを気にしたくない、という動機で理系の頭脳だったら、というパターンがある。きわめてシンプルだ。

もっとも、単純に他利を考えている場合もある。そのひとつが、写真用品企業のひとつである3iの方針だ。高品質なレンズクリーナーを発売する一方で、海外からフィルムなどを仕入れて市場に提案。話題になり実績をあげている。特に最近、話題になっているのがLAB-BOXである。要は、暗室いらずのフィルム現像キットなのだが、最近の若いフィルムカメラを楽しむ世代には、使いやすく手軽だし非常に良い商材と言えるだろう。ほかに、いわゆる写ルンですタイプの製品でも、女性用に花柄のデザインのものなど多くを入れている。フィルムの場合も、パッケージというか外装のデザインをかわいくしているが、これも人気だという。

書いたように、ここの出すものは、正統派のお手入れ用品であるレンズクリーナーや新製品となるボディクリーナー、高品質の素材を使ったストラップなどの自社開発品の一方で、こういった海外からのユニークなものなど多岐にわたっている。通常の体に使う石鹸も出している。その商品ラインナップに対する考え方を一度、同社の社長に聞いてみたところ「特にないよ」笑いつつ、しいて挙げるならと「要は消費者に喜んでもらえる商品を出していきたいだけ」と語っていた。これは、他利のシンプルな思想だろうなぁ。

まさに、3iのLAB-BOXをはじめとする製品群は他利をして自利を得るアイテム、なのだ。

しかし・・この写真業界というのは、たまにこういう企業がある。例えば、中古カメラの光陽商事なども、まずは恩返しをモットーにあまり利益も多くは取れないであろう仕事も、誠実にこなしている。結果、本業の部分でしっかりと利益を得ている。なかなかだ。まぁ、我利我利亡者で酒さえ飲めればというこちらには真似できない。
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